北朝鮮レストラン「仁風閣」に潜入
中国東北部に位置する吉林省の省都、長春。かつて新京と呼ばれ、満洲国の首都として栄えたこの都市には、現在も東北アジアの多様な文化が交差している。
そんな長春の中でも、ひときわ異彩を放つのが北朝鮮レストラン「仁風閣」だ。地理的には日本のすぐ隣にある国、北朝鮮。だがこの国の実態は、日本人にとって今なおベールに包まれたものとなっている。「近くて遠い国、北朝鮮。」、この北朝鮮の雰囲気に少しだけ触れられる場所が、ここ長春にあった。
こちらが仁風閣の店構えだ。朝鮮式の建築様式、色彩を感じられテンションが上がる。ここだけを見ていたら中国にいることを忘れてしまいそうだが、電光掲示板にはしっかりと中国語でのメッセージが流れていた。

「仁風閣」と書かれた店舗名看板の下には、しっかりとハングルでも「인풍각(インプンガク)」と記載されている。

店の前には黒塗りの高級車が何台も停まっていて、少し威圧感がある。それでも勇気を出して、いざ店内へ入ってみよう。
スーツ姿の女性スタッフによる席案内
回転扉を押し店内へ入ると、正面に受付があり女性の店員さんが出迎えてくれた。だが外国人がやってくるとは思っていなかったのかびっくりした様子。だが「지금 식사 돼요?(今は食事ができますか?)」と聞くと大丈夫とのことで、席へと案内された。店員さんは皆さんスーツ姿で、民族衣装でなかったのがちょっと残念。
席は2階とのことで、階段を上っていく。北朝鮮レストランの階段を上るというのは、なかなかのドキドキ感がある。

そして到着したのがこちらの席だ。壁には男女一対の木彫りの面が飾られていた。韓国でもよくお土産で売られている仮面劇(タルチュム)の面である。

席の奥の方にはステージがあった。ピアノ等も置かれ、夜にはショーが行われるのだろうか。北朝鮮国旗のカラーリングの装飾があちこちにされているのも雰囲気がある。

おすすめの延吉冷麺が美味
席に付いて少しすると、先ほどのスーツ姿の女性店員さんがメニュー表を持ってきてくれた。

北朝鮮レストランへやってきたら、やはり食べたいのは平壌冷麺。メニュー表をめくると、しっかりとメニューに載っていた。「よし、これを頼もう!」と女性店員に話しかけると、「せっかく吉林省に来たなら”延吉冷麺“がおすすめよ!」というじゃないか。
延吉とは吉林省内にある「延辺朝鮮族自治州」の中心都市のことで、この街名を冠している通り延吉冷麺は中国内(主に東北部)における定番の冷麺なのだそうだ。朝鮮族が多く暮らす中国・延辺地方で親しまれている冷麺で、地元食材や中国風の工夫が加えられているのが特徴とされる。
こう言われたら、もう延吉冷麺を頼むしかない。店員さんにそう告げて、はじめての「延吉冷麺」を待つことにした。

待つこと10分程度、延吉冷麺が運ばれてきた。見た目は他で食べたことのある平壌冷麺とあまり変わらないようだ。麺も平壌冷麺と同じく蕎麦粉が使われ色が付いているのが特徴だ。

スイカやゆで卵等が乗っており贅沢な見た目になっている。他にはカクテキやキュウリもあり、食べ進める際の良いアクセントだ。中でも驚いたのが、キムチがキャベツで作られていること。通常白菜キムチが多いのだが、延吉冷麺にはキャベツが使われるのだそうだ。

もちもちの麺がおいしい。スープには牛の旨みが溶け込んでいて、どれだけ飲んでも飽きが来ない。スープにしっかり目にお酢が効いているのも延吉冷麺ならではの特徴だ。
はじめての延吉冷麺体験、あっという間に一杯食べ終わってしまった。こちらをおすすめしてくれた女性店員さんに感謝だ。
韓国式の咸興冷麺、平壌冷麺に加え、第三の冷麺「延吉冷麺」をこれからは探して食べて行ってみたい。

仁風閣へのアクセス
今回「延吉冷麺」をいただいたお店「仁風閣」の地図を以下から確認できます。また営業時間は月曜日〜金曜日は9:00〜14:00、16:00〜21:00。土曜日・日曜日は9:00〜21:00です。
ぜひ長春へ来た際は、北朝鮮レストランで本番の延吉冷麺を食べてみてください!
百度地図の場合はこちらから確認できます。
長春での宿泊は、かつて南満州鉄道が経営していた名門ホテル「旧新京ヤマトホテル(現:春誼賓館)」がおすすめです!
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