先日、広東省を訪ねた。
同省内の深圳で日本人学校に通う男児が刺殺され亡くなるという悍ましい事件が起きた翌日ということで緊張感のある中での渡航だったが、着いてみると思いの外に広東省はゆったりとしており、どこかアジア特有の懐かしさを感じるような土地であった。
というのも、深圳や広州のビジネス街を除いては全くと言っていい程外国人に出会わない。それもそのはず、コロナ禍以降短期滞在ビザ免除の停止が行われているためなのだ。
一部認められている国もあるにはあるが、残念ながら日本は政治的な問題もあり未だ停止中のビザ免除。そんな中だが中国に行きたい、なんとか行けないのかと調べたところ、行ける方法を発見。トランジットビザがその鍵として存在した!
トランジットなので、一時滞在先として中国に降り立てば良いということなのだが、これが一見分かりづらい。要は日本から行く場合、第三国を経由して中国に入るか、中国からの出国先を第三国にして、帰路の交通チケットを持っていれば良いのだ。
例えば日本→中国→(韓国)→日本、日本→(タイ)→中国→日本のような形であればOK。
日本→中国→日本というダイレクトなのはNGとなる。
※( )内が第三国
香港、マカオも第三国認定されていたため、香港に出国するという形で私は行くことにした。
中国から新幹線に乗って香港へ陸路越境するという体験もしてみたかったためである。
万事渡航準備が整ったということでやってきたのは羽田空港。私にしては随分と余裕のある二時間前に空港へと到着した。そして航空会社のチェックインカウンターに赴き手続きをはじめて言われた一言がこちら。
「このルートでは認証できず航空券を発券できません。」
「なぬ、そんなことがあるのか。そんなはずはない、何度も大丈夫だと調べたから行けるはずだ。」
こう思いながら、かつてない一時間もの空港での悪戦苦闘がはじまるとは。
過去にも空港において入国・出国審査でやり合ったことはあるが、航空会社のカウンターでというのは予想外。こうなってしまった理由は、今回私が計画したルートにあった。
羽田→広州(広州白雲国際空港)→汕頭→潮州→香港→羽田というルートで、広東省の最東部の街である潮州市最寄りの潮汕駅から第三国の香港まで新幹線で行くという行程だったのだが、この潮汕駅が航空会社のシステムに登録されていなかったためだ。
そりゃあそうである。中国へ入国するのですら大変なのに、日本人でこんなルートで出国を取る人はいないでしょう。
「ルール上は行けるはずです!大丈夫なはずだから確認してください!」という私の強い要望に、航空会社の方もあちらこちらへ連絡して確認を進めていってくれている。
明らかにめんどくさそうな作業で感謝しかない。だがこの間も私の後方にどんどん膨らんでいく長蛇の列。このままでは全員でチェックインが間に合わなくなってしまうのではないかという焦り。
「やっぱりダメです。認証されません。」
非情な航空会社の方からの声。「なんでだよ」、と思いながらもこのままではお互いに埒が開かないということで、通常時とは別場所の特別なカウンターでの対応のため移動となった。
こちらでは現地側の広州白雲国際空港のスタッフの方に電話で確認してくれている。現地側への確認、なんと心強いことか!
が、気づけば保安検査場閉鎖5分前。1時間以上の余裕があったはずなのに、なんということか。引き続きスタッフの方は哀れみの目で見てくれているが、ここは聞かずにはいられない。
「もうクローズの時間間近ですけど、いけますかね?」
すると「こちら都合ですので大丈夫です。これからでも入れます!」というありがたいお言葉。と言ってはいたが、今度はフライトの時間が迫ってきている。
さすがにヤバいんじゃないかと思っていたところでスタッフの方から、「とりあえず発券しちゃうので、搭乗口に向かってください!」との言葉。来た!これは行ける!
まだ入国できるかの確認が済んでいないということではあったが、とりあえずダッシュで搭乗口へ向かう私。到着すると搭乗がはじまっていたが、チケットをゲートに読み込ませ、無事通過。どうにか飛行機に乗り込むことができた!
あとは飛行機の扉が閉まればこっちのものだ。頼むから呼び出しは無しにしてくれ。ここから飛行機を降りることになるのはあまりにも無情だ。
実際には数分だったと思うが、この待つ時間が果てしなく長い。だがそのまま最後の乗客が乗り込みを終え、見事飛行機の扉が閉まった。「よし、出発できる!」、まだ東京にいるというのに、かなりの精神をすり減らすことになった。
窓の外に見える朝日を受ける東京のビル群の風景。綺麗に山肌まで見える富士山が祝福をしてくれているようだ。
この先、中国の大地では何が待ち受けているのか。そもそも中国内に足を踏み入れることはできるのか。続きにも乞うご期待!
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